コスメ業界の新ジャンルとして注目されている「クリーンビューティー」についてご存じですか。SDGsやサステナビリティが世界的に叫ばれるようになり、ここ数年で多くの企業がクリーンビューティーに力を入れるようになりました。
ここでは、クリーンビューティーとは何か、基礎知識や注目される理由、オーガニックコスメなどとの違いについて詳しく解説しています。
クリーンビューティーなコスメブランドについても紹介していくので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
クリーンビューティーとは
クリーンビューティーとは、日本語に訳すと「清潔な美しさ」、つまり、清潔で透明性のあるコスメづくりや製品そのもののことを指します。
具体的に言うと、「人や社会、地球の環境に優しい」をコンセプトに作られたコスメです。
2010年代にアメリカやヨーロッパで生まれた考え方で、ここ数年で世界的に広まり、日本のコスメ業界にも影響を与えています。
明確な定義はありませんが、以下のような化粧品やコスメがクリーンビューティーにあたるとされています。
人体にやさしい
人体に悪影響を及ぼす成分や、健康を阻害する可能性のある成分を使わない製品づくりを行ないます。
自然由来・天然由来の原料や安心して使える「クリーンな成分」を使ってつくられるコスメはクリーンビューティーにあたります。
環境に配慮している
製品の生産・製造や流通において、地球環境に配慮した取り組みを行ないます。
例えば、製品のパッケージをプラスチックではなくガラス容器や再生紙などの素材を使う、リサイクル可能なバイオマスプラスチックを採用するなどが挙げられます。
また、空輸ではなくCO2排出の少ない船を使って運ぶなど、生産時だけでなく製品の運搬時にも環境配慮がされることもあります。
透明性を重視している
クリーンビューティーでは、製品がいつ、どこで、誰によって生産されたかを明らかにし、透明性のあるブランドにしようという動きも特徴のひとつです。
コーポレートサイトやブランドサイトで、コスメの原料や生産地、使われている成分のこだわりを公開しているコスメは、クリーンビューティーに取り組んでいると言えるでしょう。
クルエルティフリー
コスメを製造する過程で動物実験を行わない「クルエルティフリー」を謳うブランドもクリーンビューティーと言えます。動物の権利を守ろうという考えから行われているもので、この動きはコスメ業界だけでなく、ファッション業界などでもはじまっています。
毛皮や皮革、ダウン・ウールなどの素材を使った製品が街で見られなくなってきているのも、このクルエルティフリーによるものです。
クリーンビューティーとオーガニックコスメの違い
クリーンビューティーは、生産から運搬まで、流通工程のすべてにおいて人と地球環境に配慮されたコスメです。それに対し、オーガニックコスメは製品の成分にそのものにフォーカスされているものを指します。
オーガニックコスメとは、なるべく農薬を使わず、自然な農法で育てられた植物由来の成分がメインのコスメのこと。人体や環境にやさしいという点では、クリーンビューティーの一部と言えます。
クリーンビューティーとヴィーガンコスメの違い
ヴィーガンコスメとは、動物由来の成分を一切使用しないコスメのことです。動物由来の成分とは、はちみつ由来の「ミツロウ」や馬からとれる「馬油」、サメ由来の「スクワラン」などがあたります。
オーガニックコスメと同様、ヴィーガンコスメも使われる成分にフォーカスされてはいますが、動物愛護の観点から見ると、クルエルティフリーの考えに共通しておりクリーンビューティーの一種です。
クリーンビューティーとナチュラルコスメの違い
ナチュラルコスメとは、自然由来、天然由来の原料を使って作られたコスメのことです。
ただし、ナチュラルコスメには明確な基準がなく、少しでも天然由来の成分が入っていれば「ナチュラル」と謳うものもあり、その定義はあいまいです。
ナチュラルコスメの中でも、生産や流通において人体の健康や環境に配慮された製品であれば、クリーンビューティーの一括りとして捉えることはできます。
クリーンビューティーが注目される理由
ここ数年でクリーンビューティーの考えが広まったのには、2015年に国連サミットで採択されたSDGsが深く関係しています。
世界中が協力してサステナブルな社会を実現しようという動きがはじまり、多くの企業がSDGsの活動に取り組み始めました。
クリーンビューティーの取り組みの多くは、SDGsの17の目標のうちの「つくる責任 つかう責任」や「海の豊かさを守ろう」の目標達成につながります。
クリーンビューティーが注目されているのは、世界があるべき理想の姿を実現するために「美しさの再定義」がされはじめたからと言えるでしょう。
クリーンビューティーコスメの選び方
クリーンビューティーとしての明確な基準が設けられていないため、クリーンビューティーなコスメを選ぶ際にはいくつかポイントがあります。
以下では、クリーンビューティーなコスメを選ぶポイントをまとめました。
使われている成分で選ぶ
ブランドやコスメによって「人体や環境にやさしい」成分の基準が異なるため一概には言えませんが、注意すべき成分が入っていないことを確認するのがひとつの手です。
ただし、注意すべき成分の全てが「危険」というわけではありません。実際に、現在市場で使われている成分は、人体に直接害がないものとして認可されています。
また反対に、全ての自然由来成分や天然由来が「安全」と保証されているわけでもありません。
注意すべき成分とは、あくまでもクリーンビューティーの「環境への配慮」という視点で捉えられたものです。
コスメに使われている成分をチェックして、自身で判断する必要があります。
シリコン
シリコンとは、肌触りを滑らかにする合成ポリマーのこと。毛穴をカバーしたり、汗をかいても落ちない「ウォータープルーフ」のコスメに使われたりする成分です。シャンプーやコンディショナーでは、指通りの良い髪にする成分として使われることがあります。
直接人体に害を及ぼす危険はありませんが、毛穴詰まりや肌の乾燥を引き起こす可能性が示唆されているほか、自然界の微生物では生分解されたないため問題視されています。
パラベン
化粧品がカビや微生物などの影響で腐敗してしまわないよう、品質を長く安定させるために入っている防腐剤の一種です。人体への影響が低く、使用量に制限が設けられているため、100年以上前から化粧品や医薬品に広く使われています。
ただし、人によってはアレルギー反応を起こす可能性があるほか、内分泌かく乱やがん誘発のリスクがあるのではないか、と懸念する人もいます。
鉱物油・植物油
鉱物由来、植物由来のどちらを使っているコスメも、クリーンビューティーにはあたりません。
鉱物油とは石油から採れる油で「ミネラルオイル」とも呼ばれます。酸化しないため、化粧品の品質を長期的に安定しやすいとして広く利用されていますが、石油から生まれるため、SDGsな原料ではないとして問題視されています。
また、植物由来のパームオイルは、自然由来の成分ではあるものの、大量生産による森林破壊や東南アジア地域の労働者の人権侵害が叫ばれています。
クリーンビューティーなコスメを選ぶなら、オイルフリーの化粧品かどうかをチェックしてみてください。
認証マークで選ぶ
ブランドの方向性や公開されている成分情報からコスメを選ぶのも良いですが、どれがクリーンビューティーなのかいまいち分からないといった方は、そのコスメやブランドが特定の認証マークを取得しているかどうかで選ぶ手もあります。
オーガニックコスメの世界基準となっているのが「エコサート(ECOCERT)」や「コスモス(COSMOS)」などの認証マークです。
また、日本では、日本ナチュラル・オーガニックコスメ協会が認証している「JNOCA(ジャノカ)ナチュラル認証」「JNOCA(ジャノカ)オーガニック認証」があります。
これらの認証マークを取得しているコスメは、自然原料を使用している、アルコール類や合成ポリマー、シリコンを使用していないなど、認証機関の細かな審査項目をクリアしていると証明されています。
これらはナチュラルコスメやオーガニックコスメのために設けられた基準ではありますが、これらの認証マークを目安として考えるのも良いかもしれません。
クリーンビューティーなコスメブランド
Athletia(アスレティア)
2020年に日本で生まれたコスメブランドで、成分や容器はもちろん、店舗の内装まで地球環境に配慮した製品づくりに取り組んでいます。
ブランドの主力成分であるアシタバとシソは、農薬や化学肥料を使わない自社の循環型農園で栽培されているとのこと。動物実験を行わない旨も宣言しています。リサイクル素材を使用したパッケージはシンプルでナチュラル。自然の美しさと機能性を感じさせられるデザインが特徴的です。
DRUNK ELEPHANT(ドランクエレファント)
ドランクエレファントは、アメリカ発のクリーンビューティーコスメ。美容液やクリームなどの複数のアイテムを手のひらで混ぜ合わせることによって、ワンステップでスキンケアが完了する独自の「スキンケアスムージー」を提案しています。原料にエッセンシャルオイル、シリコン、アルコール、紫外線吸収剤、界面活性剤、香料・染料の6種を配合しないと宣言しており、肌にやさしく時短につながると人気です。
FRenava natural &organic(フレナバナチュラル&オーガニック)
金沢の老舗酒造メーカー「福光屋」が、米発酵と美容の関係について注目、研究して作られたブランドです。酒づくりに欠かせないお米や酒粕などが原料となっており、全アイテムで天然由来成分が使用されています。パッケージにはリサイクル可能なガラスや再生プラスチックを使っており、日本のJOCA、JNOCAオーガニック認証も取得しているクリーンビューティーコスメです。